2009-11

ヒカリの父親について勝手に妄想してみた(何

 ポケモンDPの中の謎の1つ、ヒカリの父親。
 ↓のページを見た事がきっかけで、改めて考えてみました。
 http://mag.autumn.org/Content.modf?id=20060928215445

 プラチナでは、バトルタワーでクロツグに勝つと、
「お前の父さんも優秀なポケモントレーナーだった」とクロツグが言います。
 この設定に準じるとすれば、ヒカリの父親もポケモントレーナーであった可能性が高いです。

 しかし、なぜ家にはいないのだろうか。クロツグはなぜ「だった」と過去形で言うのだろうか?

 先程URLを載せたページを読んで、僕はやはりヒカリの一家は裏で父親の事で何か暗い影を落としているんじゃないかと思いました。
 父親がいないのには、単身赴任とかじゃない、何か割り切れない理由があるんじゃないかと。

 そんな訳で、ヒカリの父親がいない理由に関して、僕が勝手に考えた『答え』を短編小説にして書いてみようと思います。
 あくまで僕の勝手な妄想にすぎませんので、ご了承ください。



 時は、今から10年前にさかのぼる。

 シンオウ地方のとある場所で、ポケモンバトル大会が開かれていた。観客席は満員御礼。そして今、まさに試合が始まろうとしている所だ。湧き上がる興奮を抑えきれずに歓声を上げる観客席の最前列に、彼女はいた。
 彼女の名は、アヤコ。 
 かつてはポケモンコーディネーターとして活躍し、トップコーディネーターの座まで上り詰めた女性だ。しかし現在は、コーディネーターとしての活動から完全に引退している。その理由は、彼女の体そのものが物語っていた。
 彼女の腹は大きく膨らみ、大きな丘を作っている。そう、今彼女の体の中には、もうじき生まれる新たな命が宿っているのだ。
 お腹の中の子供は、順調に育っている。病院での診断によれば、どうやら女の子らしい。あと数か月もすれば、産声を上げる時が来るだろう。
 そんなアヤコの視線の先には、バトルフィールドに立つ、1人の男の姿があった。その凛々しい眼差しは、相手のトレーナーを貫いている。
 彼こそ、アヤコの夫である。
 彼は、優秀なポケモントレーナーだ。各地のポケモンリーグでも好成績を収めている。アヤコはそんな彼と旅の中で偶然出会い、恋に落ちてしまった。そして結婚し、やがてもうじき生まれる子供を授かったのだ。彼女が結婚した時には、有名人とあって、多くのマスコミで騒がれたものだ。
 この大会には、彼が子供が生まれる前に参加する、最後の大会として参加していた。彼もまた、生まれてくる子供を楽しみにしているのだ。時間が許す限り、精一杯生まれた子供との時間を一緒に過ごし、成長を見守りたいと彼は考えている。それ故、この大会への意気込みも強いものだった。
「あなたー、がんばってねー!!」
 アヤコはそんな彼に出せる限りの声援を送る。そして遂に、バトルの火蓋が切って落とされた。

 炎が燃え、風が舞い、鳴き声が轟く。
 戦いはどちらも一歩も譲らぬ、互角の勝負だった。そんなバトルを目の前で見て、観客の声援もさらに熱くなっていく。それは、ポケモンバトルの大会ではどこでも見られる光景だった。
「あなたも聞こえるでしょ? これが、ポケモンバトルなのよ」
 アヤコは、そっとお腹の中にいる子供に呼びかける。子供が生まれたら、自分達が触れたポケモンの世界に触れさせてあげたい。ポケモンコーディネーターであった彼女にとって、それは自然な流れだった。
 その時、相手のポケモンが渾身の力を込めて光線を発射した。“はかいこうせん”だ。彼のポケモンは、それを素早くかわしてみせた。
 しかし、空を切ったその光線は、真っ直ぐ彼自身へと向かっていく。
「あっ!!」
 アヤコが思わず声を上げた。彼もそれに気付いたようだったが、その時にはもう遅かった。

 ドドーンと爆発が起き、爆風が彼の体を飲み込んだ。観客席の熱いムードが、一瞬にして静まり返った瞬間だった。
「あなたっ!!」
 それを見たアヤコはお腹の中の子供の重さも忘れて、反射的に立ち上がっていた。
 爆風が消えると、そこにボロボロになってぐったりと倒れた彼の姿があった。その周りに、緊急時に備えて待機していた医療班の人間が慌ただしく集まってきた。
 アヤコもまた、いてもたってもいられなくなり、すぐに重い体にむち打って、観客席から動き出していた。

 * * *

 こういう事故は、世間から見れば、決して珍しい事故ではない。
 ポケモンバトル中に、ポケモンが放った流れ弾が、トレーナーやバトルの観戦者に当たってしまい、負傷・死亡させてしまう事故は、ポケモントレーナーにとって交通事故のように頻繁に起こる事故だ。このタイプの事故は、大きな社会問題となっており、それは10年経った今でも変わる事はない。
 ポケモンを扱うという事は、想像以上に危険な事である。熟練したトレーナーでさえ、何が起こるかわからないのだ。

 * * *

 当然ながら、バトル大会は中止。彼はすぐに、救急車によって病院に搬送された。もちろん、アヤコも同行した。彼の傷は重傷であり、意識も失っていた。アヤコはそんな彼に、病院に運ばれるまでの間、必死で呼びかけ続けていた。

 病院に到着すると、すぐに彼は集中治療室に搬送された。アヤコはただ、病室の外で彼の無事を祈るしかなかったが、その願いも届く事はなかった。

 アヤコが病室から出てきた医師から聞いた言葉、それは……

「先生! 夫は、夫はどうなのですか!」
「奥さん……残念ですが……」

 アヤコはそれを聞いた瞬間、目の前が真っ暗になった。


 彼は失った意識を回復する事なく、この世を去ってしまった。
 これから生まれてくる、子供の顔を見る事がないまま……


 アヤコはその場に崩れ落ち、涙が止まらなくなった。それはどんなに泣いても、尽きる事がなかった……

 * * *

 数日後、未亡人となったアヤコは流した涙の分だけ、心のにぽっかり穴が開いてしまっていた。
 彼の残したポケモン達は、妊娠している身のアヤコだけでは世話しきれなかったため、他のトレーナー達に譲る事になった。
 これから夫と2人で、幸せな家庭を築くはずだった。それが、偶然起きてしまったあの事故で、無残にも打ち砕かれてしまった事が悔まれる。
 なぜ彼は死ななければならなかったのか。これから生まれてくる子供は、この事実をどう受け止めるのだろうか。こんな結末になるのなら、なぜ彼と出会ってしまったのか……そう考えると、涙が止まらなかった。
 しかし、いつまでも悲しみに暮れている訳にはいかなかった。お腹の中にもうじき生まれる子供がいる。それが理由だった。
 このままでいて生活のリズムを崩せば、お腹の中の子供にまで影響が出てしまう。健康な子供が産まれてほしいという願いは、これから母親となる身として当然のものであった。そして何より、悲しんでばかりいては、生まれた子供をしっかりと育ててあげる事ができない。
 彼の分も、生まれてくる子供に精一杯愛情を注いで育てよう。
 アヤコは、お腹の中の子供に対する愛情から、そう決意したのだった。

 * * *

 そして彼女は女の子を出産し、ヒカリと名付け、女手1つで育て上げた。
 今ではすっかり傷跡が癒えたようにも見えるが、亡き夫が残した傷跡は、10年経った今でも心の底で影を落としている。
 有名人とあって、あれ以来アヤコは多くの男性から求婚されたが、全て断った。ヒカリのためを思ってでもあるし、何より愛する人を失った悲しみを知ってしまった事で、新しい人との関係を持つ事を嫌ったからだ。
 ヒカリには、いずれ時が来たら父が亡くなったいきさつを話そうと思っていたが、母に憧れ、トップコーディネーターを夢見るようになったヒカリには、その夢を壊してしまいそうな気がして言う事ができず、結局今にいたるまで、真相は伝えていないままだ。

 アヤコとヒカリの陽気さは、この暗い影の反動によるものなのかもしれない……

 完



 ふう。かなりシリアスで本格的な小説になってしまいましたね(汗
 感想はどうぞ掲示板に書いてください。どこかのサイトに投稿してみようかな?

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